美津希とミーの魔法日記(四)

公開日:2024年9月17日

第三章 ミーの教えと美津希の成長

放課後、美津希はミーと静かに会話しながら家に向かっていた。学校での授業は普通だったが、ミーがいつも自分の内にいることを感じると、美津希は心強く思えた。魔法の力を持つという不思議な日常にも少しずつ慣れ始め、美津希はミーの存在に感謝していた。

ミーからの教え

その晩、美津希はふと疑問を抱き、ミーに尋ねた。「ミー、私が魔法を使ってもいいのかな?その力で何をするべきか、時々わからなくなるんだ。」
ミーは静かに応じた。「美津希、心配しないで。魔法は、その人の心に従って使われるもの。悪い人が使えば悪いことに、善良な人が使えば良いことが起こるの。それに、美津希はとても優しい心を持っている。だから、この力を正しく使えると信じてる。」

美津希は少し考え込んだが、ミーの言葉に安心し、微笑んだ。「ありがとう、ミー。私、ちゃんと頑張るよ。」

枯れた木々の奇跡

翌日、学校で美津希は友達の結衣と一緒に過ごしていた。結衣はいつものように明るく、元気いっぱいで、ジョークを飛ばして美津希を笑わせていた。結衣の明るさが、美津希の心を和ませ、二人は笑いながら教室を後にした。

放課後、二人はいつも通り、近所の公園を通って家に向かっていた。日が少し傾き始めた空はオレンジ色に染まり、公園には子供たちの遊ぶ声が響いていた。美津希は穏やかな風に包まれながら、心の中でミーに話しかけた。「今日はいい天気だね、ミー。」

しかし、公園の中央にある木々に目が留まった瞬間、美津希の顔に緊張が走った。公園を囲む木々が、急に枯れ始めていたのだ。ほんの数日前までは青々としていた木々が、今では茶色くなり、葉は枯れ落ち、枝も乾燥していた。まるで、一瞬で生命を失ったかのようだった。

「結衣、見て!」美津希が木を指さすと、結衣も驚きの声を上げた。「えっ、こんなこと、いつの間に……」

公園にいた他の人々も、木々の異変に気づき始め、ざわめきが広がった。誰もがなぜこんなことが起こっているのか、首をかしげながら、不安そうに周囲を見渡していた。

「美津希、これって変じゃない?」結衣は心配そうに木を見上げた。彼女の目は不安に揺れていた。

美津希も異変を感じていた。「うん、何かおかしい……ミー、これって……?」美津希は内心、何か悪い予感を感じながら、心の中でミーに呼びかけた。

ミーは美津希の体内でその異変を察知し、心の中で静かに説明した。「これは、自然の魔法のバランスが崩れている証拠だわ。何かがこの公園の生命力を吸い取っているようね。美津希、この場所を助けてあげられるのは、君しかいないかもしれない。」

「私しか……?」美津希は一瞬戸惑ったが、ミーの力とアドバイスに励まされ、決心した。「わかった、ミー、やってみる!」

美津希はそっと手をかざし、意識を集中させた。心の中でミーの力を借り、木々にエネルギーを送る準備を整えた。彼女の手から、ほのかに温かい光が放たれ、それが枯れた木々に向かって広がっていった。

周りの人々は何も気づかず、木々をただ不思議そうに見つめていたが、美津希の内側から静かに放たれる魔法の力は確実に木々に届いていた。彼女はそっと祈るように心の中で呟いた。「どうか、元に戻って……」

すると、木々の葉が徐々に元気を取り戻し始めた。最初はかすかに、次第に目に見える形で、枯れていた枝から新しい葉が芽吹き、茶色くなっていた葉は再び緑に戻り始めた。周りの木々も同様に、その生命を取り戻し、見違えるように元の姿へと変わっていった。

結衣はその変化に気づき、驚きと喜びの入り混じった表情で木を見上げた。「美津希、見て!木が元気になってきたよ!なんで急に……?」

美津希はその場で手を下ろし、静かにため息をついた。「よかった……」と小声で呟いたが、結衣に気づかれないようにすぐに立ち直った。

「すごい……これってどうして?」結衣が美津希に向かって問いかける。美津希はすぐに答えた。「ううん、きっと自然が自分で元に戻ったんだよ。」

結衣は半信半疑の顔で頷いたが、美津希の言葉を疑うことなく、「本当によかった……さっきはびっくりしたけど、もう安心だね。」と笑顔を浮かべた。

その時、美津希の心の中でミーが囁いた。「美津希、素晴らしいわ。君の優しい心が、この場所を救ったのよ。」

美津希は内心ほっとしながら、「ありがとう、ミー。君がいなかったら、私はどうしていいかわからなかった。」と感謝の気持ちを込めて心の中で答えた。

公園に再び元気な子供たちの笑い声が響き始め、木々の緑はまるで何事もなかったかのように美しく輝いていた。美津希と結衣はその光景を静かに見つめながら、再び家に向かって歩き始めた。

星空の下の静かな屋根

夜が更け、美津希はいつものように屋根に上がった。月が輝く静かな夜空の下で、彼女は深呼吸をしながら空を見上げた。何も考えずにただ星々を眺める時間は、彼女にとって特別だった。

「ミー、今日は不思議な一日だったよ。」美津希は心の中で話しかけた。

すると、ミーは体からそっと抜け出し、美津希の隣に現れた。美津希はミーを見て微笑んだ。「君がいなかったら、あんなにうまく木を助けられなかったよ。ありがとう、ミー。」

ミーは美津希の肩に寄り添いながら答えた。「君は自分の力でやったのよ。私はただ少し背中を押しただけ。美津希の優しい心が木々を救ったんだ。」

「魔法を持つことって、ただ便利な力じゃないんだね。責任があるっていうのが、少しずつわかってきた。」美津希はそう言って、また空を見上げた。空には、まるで彼女たちを見守るように無数の星が輝いていた。

「その通りよ、魔法を使うことには常に責任が伴うわ。でも、君ならその力を正しく使えると信じている。君の心は善良で、他の誰かのために行動できる力を持っているもの。」ミーは優しくささやいた。

美津希は星々を見つめながら、自分の心の中で何かが強くなるのを感じていた。「もっと成長しなきゃね。ミーと一緒に、私ももっと強くなるよ。」

「私も君と一緒に成長していくわ、美津希。」ミーは優しく応じる。

風が二人の間を静かに通り抜けていく。美津希は星を見上げながら、夜空の広がりに自分が包まれていくような感覚を味わった。「いつか、この星空のように、もっと広い世界を見てみたいな……」

「その日が来るわ。美津希の成長と共に、もっとたくさんのことを経験することになる。」ミーは未来の可能性を静かに示唆した。

二人はしばらく無言のまま、ただ星空を眺めていた。夜風は優しく、心地よい静寂が二人の間に広がった。その瞬間、美津希はこの特別な時間が、いつまでも続いてほしいと感じた。

「ミー、ありがとう。いつも私を助けてくれて。」美津希はそっと目を閉じ、心の中で感謝の気持ちを抱いた。

「私はいつも君のそばにいるよ。これからも、一緒に歩んでいこうね。」ミーは優しく囁いた。

その夜、美津希とミーは星空の下で静かに座り続け、無言の中でも二人の絆はさらに深まっていった。

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